
小椋:
ブナタテ尾根にはトレースがついてなかったので、ルートファインディングしながら下りることとなった。始めのうちは雪が深くて木の根に足を引っ掛けることも無く、尾根もしっかりたどれたので順調に下れたが、本当に始めだけで、下るにつれ、トラバ−スやら滑りやすい急斜面のくだりやら、足に引っかかる木の根・岩やらがでてきて、やたらと雪に埋まったり、転んだり、滑り落ちたりし、おまけに尾根がはっきりしなくなってきてルートファインディングも大変になりで、尾根の中盤はとても歩きづらかった。
木野:
あとは下るのみ、ワクワク下山気分で一杯だった。しかしそれは大間違いだということをすぐに知らされることになる。今までで一番雪を踏み抜くことが多かったのだ。しかも下りなので油断すると滑落したり、もがけばもがくほど雪深くはまってしまう。ゴールは近いというのに暗澹たる気持ちにさせられた。リーダーは一生懸命ルートファインディングをしてくれているが、僕はそれどころではなく、ただ二人に必死について行くだけで精一杯。
二人にだいぶ引き離され、頭ではわかっているのにしんどさのあまりトレースのついていない沢筋をショートカットしようとした。案の定、首まで雪にはまり、ザックもはまって引っかかり、どうしようもない状態になった。闇雲にもがいたりするもんだから、ものすごく体力を消費しているのがわかる。首までだったからいいものの、下手すれば窒息してしまう。また片岡さんに怒られた。今回ばかりは今までの疲れも相まってかなりへこむ。もう何も考えたくない気分だったが、怒られた分だけ自分の勉強になるんだと言い聞かせながら何とか脱出。でもやっぱりしんどい。

木野:
この道でいいんですかねえとしきりに振り返って片岡さんに同意を求めるリーダー。無理もない。正直こんな尾根ごときナメていたが、ルートを少し間違えただけでも戻りがかなりつらい。なるほど、偵察山行で印をつけておく理由が良くわかる。夏道が全く見えず、雪深い上に、細かい尾根がたくさんあるこういう所ではルートファインディング能力は非常に重要だ。まだ視界が良かったからいいものの、これで視界不良だと最悪だ。
二人に遅れること数十分、ふと下を見ると小椋のザックだけポツーンと木か何かに引っかかっている。「はて?」と思いつつしばらくすると本人がさらに下から登ってきた。どうやら滑落した際にザックだけが引っかかって本人はスポーンと滑っていったようだ。なんだかロボットヒーロー物の出動シーンみたいでちょっと笑えた。
小椋:
最後の標高差200メートルほどは広い斜面なので自由自在に歩け、雪が無いときよりずっと早く下れたので、もう終わりだあ、と思っていたら最後の最後に雪と岩の壁にぶつかった。荷物を背負っていると危ないと言うことで、先に荷物をすべり落とし空身で慎重に下降。10メートルほどだったが、最後にえらく緊張させられた。ここを降りようやく下山出来たと実感した。
木野:
リーダーに続いて慎重にクライムダウン。落ちてもどうって事はなさそうだったので、さほどドキドキ感がなかったのがちょっと残念。でも無事降りたときにはホッとした。片岡さんと固い握手を交わし、感極まって涙が出そうになった。そういえば小椋とは握手したかなあ?僕としては二人と抱き合って喜び合いたいぐらい感動していたのだが。

木野:
あとはただひたすら歩くだけなのだが、こういうのが一番苦手だったりする...

木野:
高瀬ダムへと続くトンネルは、真っ暗だった。何も見えない。ヘッドランプは電池が切れかかっていた。予備電池があったが、あえて真っ暗な状態で歩いてドキドキ感を味わう。そんなことができるほど、心に余裕が生じていた。そういえば昔、山口に住んでいた頃に暗闇トンネルを歩いたことがあった。確か工事中の山陽自動車道のトンネルだ。


木野:
トンネルを抜けると、そこはダムだった(意味不明)。

木野:
高瀬ダムのクネクネ道は凍結さえ気をつければどうってことはない。最初来た時は見た瞬間にものすごくテンションが下がったのだが。初日来た時に発電所を見て、「へえ、こんな所でジャンプ競技やるんだ。」とバカなことを思っていた。 たぶん風雪のつらさで頭が回らなかったのだろう。
小椋:
後は長〜い林道歩き。唐沢岳を眺めながらテクテクテクテク葛温泉まで歩き、着いたころには薄暗くなっていてお月さんがよく見えた。

木野:
カラダというのは現金なもので、下山した途端に節々が痛み出す。特に足の指に水ぶくれや違和感を急に感じる。最後の最後で片岡さんに大きく引き離される。過去にご一緒させてもらったハイキングなどでも感じたことだが、片岡さんは平地での歩行スピードが異常に速い。でも競歩みたいにいかにも早歩きしてます!という感じでもない。普通に歩いて速いのだ。内心、「おいおい、若者がこんなオッチャンに負けてていいんか!」という気持ちがあったのだが、心身ともにヘトヘトで無理だった。葛温泉で湯船に浸かったとき、「ああ、日本人に生まれて良かった〜!」と心から感じた。
今回の合宿は今までのどの合宿・山行よりも勉強になることがたくさんあり、得た物が大きかった。片岡さんが心・技・体ともに非常に優れた素晴らしい登山家だということもものすごくよくわかった。そして小椋もすごいやつだということがわかった。彼は磨けば光るダイヤの原石だ(言い過ぎか?)。これからも様々な経験を積んでいけばきっと良き山岳部リーダーになるだろう。