
小椋:
冬型が強まって、飯田を過ぎた辺りから降りだした雪が、雪線に着いた時には相当激しくなっていた。雪線には大勢の人が集まってにぎやかだったが、適当なところで就寝。せっかく寝心地のよいところで寝転がれたのに、モソモソモソモソしていて結局一睡もできなかった。あーあーと思っているうちに夜は明けてしまい、おにぎりをいただいてから出発。すっかり晴れ渡っていて山が朝日に染まっていた。
木野:
僕にとっては初めての雪線訪問である。正直言って想像していたよりもこぎれいで、OBがよく利用している理由が納得できた。ここで澤と合流(朝にはまた別れるが)。2階に展示してある小林さんの写真を鑑賞する。小林さんほどは無理にしても、いい冬山写真が撮れればと願っていた。モソモソ小椋とは違い、すぐに就寝。起床後、シュラフで気持ち良さそうに寝ている澤が非常に羨ましく、油性マジックでヒゲでも書いてやろうかという衝動に駆られながらも雪線を後にする。
小椋:
上高地に行く八木さんと佐々木さんとは松本で別れ、ここから僕が車のナビゲーションすることになったのだが、道の選択を誤った上、それから間もなく気持ちよく寝てしまった。葛温泉からは降り出した雪の中をえんえんと平坦な雪道を歩く。
木野:
小椋を車内で寝させないために助手席でナビゲートさせることにしたが、それでも睡魔には負けてしまうようだ。ナビゲートが不慣れなのか、人とのコミュニケーションが苦手なのか、片岡さんよりダメ出しを受けていた。冬山が初めてである僕は出発地に近づくにつれ、だんだん不安になってくる。


小椋:
風は弱く、積雪は30〜40センチメートル、踏み跡もしっかりあったがとにかく長い、結局湯俣尾根の取り付までもいけず無名小屋前でキャンプすることとなった。
木野:
七倉ダム〜高瀬ダム間はどうということはなかった。しかし、高瀬ダム〜無名小屋までは一人バテ始める。元々トレーニング不足だったのが露呈した。しかも僕のせいで当初計画のC1地点まで行けなかったことで、体力よりも精神的につらくなってきた。自分自身のふがいなさに腹が立つ1日だった。体力的・精神的疲労とともに、これ以降、写真撮影枚数がガクッと落ち始める。

小椋:
目が覚めてテントから顔を出すと晴れていた。昨日の残りを歩ききったのち、いよいよ湯俣尾根に取り付くが、先行パーティのトレースがしっかりと残っていたのでワカンではなくアイゼンをつける。結局そのパーティに追いつくことは無く、人と会ったのは、昨日今日で硫黄尾根へ行くパーティ1組と北鎌尾根へ行くパーティ2組だけで、その後は下山するまで誰一人として出会わなかった。トレースがついていて、ラッセルの必要が無いとはいうものの、深雪の上を歩くのが初めての僕は何度も雪の中に足をもぐらせて、抜け出すのにえらく体力を消耗した。全くもってすばらしい晴れで、雲ひとつ無く、展望が開けると雪をかむった餓鬼岳・燕岳・大天井岳・槍ヶ岳などが必ず見えた。初めて見る冬の山並みにすっかり見とれ、静かなのがまたよい。
木野:
重い気分のまま、出発の準備をする。体力では小椋に負けるが、出発準備の手際の良さなら彼より上だ。前日と違い、最初からそれなりに雪深く、スノーシューの跡があるだけでも非常にありがたかった。他の二人に比べ僕は体重移動が下手なのか、一歩一歩踏みしめるたびに深くはまってしまう。ヒザまでならまだよいが、腰まで十数回、首まで数回はまり、天気・景色が最高なのにあまり楽しむヒマがなかった。



小椋:
木野君がやや遅れたが、樹林帯の長い雪上歩行の後、16:00ごろなんとか湯俣岳に登頂。鷲羽岳・三俣蓮華岳方面にも展望が開け、夕焼けが迫った山並みに何となくトロトロとした気分にされた。僕だけ先にテント場に行き、偵察山行のときと全く同じ場所にテントを設営。針葉樹に覆われたコルなので全くの無風だったが、日が落ちて暗くなるのと同時に急に冷え込んできた気がして、早く暖かいものを口にしたくなった。テントに入った時には真っ暗・寒い、天気図は二日連続でとれず、入り込んだ雪が解けるのがなんとも不愉快だったが、温かいお茶一杯ですぐにご機嫌となった。
今日は少々疲れた。ラッセルが無いのにこんなんなので、ラッセルがあったら・・と思うと、何だか自分の体力にかなり自信がなくなってしまった。
木野:
とにかくヘトヘトだった。一歩進んでは雪に深くはまり、また一歩進めるとさらにはまり、の連続で、一体自分はこんな人のいない所で何をしてるんだと思ってしまった。別に答えがほしいわけでもないのに片岡さんに、「なんで山に登るんですかねえ?」と聞いたり、どんどん見えなくなっていく二人に対して追いつかなければならないのに、首まで雪につかったままボ〜ッっとしていた。先にテント設営に向かった小椋がものすごく頼もしく見え、失礼ながら山岳部入部以来初めて、「さすがリーダーやなあ。」と感じた瞬間だった。
